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評価:
ジョージ・オーウェル,新庄 哲夫,George Orwell
早川書房
¥ 882
(1972-02)
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評価:
George Orwell,Mike Dean
Longman Group United Kingdom
¥ 940
(2003-10)
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この作品の感想文を高校時代「夏休みの宿題」に出したことがあって、教職員の間で物議をかもした思い出があります。なんでこんな本で感想文書いたんやろう。ちなみに国語のF先生とはこの感想文が縁で仲良くなりました。
主人公の住むオセアニア国は、他の二大国と常に戦争を繰り広げている。オセアニア国は「偉大なる兄弟」の指導の下の軍事政権で、テレスクリーンにより日常の生活まで管理される社会だ。徹底した言論規制、思想操作の元で、主人公ウィンストンは禁じられていた日記を書くという行為を始める。そして、次々となし崩し的に禁じられた行為を行っていくのだ……伝わっただろうか、、、あらすじ。
オーウェルは私が個人的に10代のころ非常に傾倒した作家であります。アッパー・ミドル出身でありながら階級制に疑問を感じ、軍隊に入っては派遣された植民地で帝国主義を嘆く。彼は常に自分のいる場所になじめないし、根拠のない自分の優位性を受け入れられない。その結果ストリートの浮浪者に混じったりもし(結局そこにもなじめないわけだが)スペイン内戦に身を投じ、階級なき社会に希望を見出しながらも、結局は共産主義に幻滅する。彼はあまりにマジメで、あまりに理想主義で、そのわりに悲観主義で現実の虚偽を正面から喝破する。この矛盾だらけの男はその矛盾ゆえに現在においても重要な著者だと思う。
1984は、少し読めば分かるかと思うが、スターリン風刺だ。それゆえに西側で大絶賛された。この作品で示唆された統制社会はあまりに現実味を帯びていたし、人々の恐怖をあおるにはもってこいだったのだ。だが、これはそんな単純な作品でもない。メディアによって世界を知っている気になっている民衆は、実は世界についてなにも知らされていない。法や倫理観によって押し付けられている言論・行動を窮屈な思いはしながらも深くは考えずにこなしていく人々。そして平等という建前のもと、実際には敷かれている階級(階層)。これらは実は別に共産主義だけの特徴でもないからだ。そして、実際1984は、西側においてプロパガンダに使われてしまったわけだ。皮肉ですね。
しっかり作りこまれた社会構造やニュースピークの設定(オセアニア国の言語・英語を土台に簡略化を施された言語。もっとも特徴的なのは反社会的〈と政府が判断したもの〉なモノをあらわす言語自体が削られている・つまり反社会的思想を緻密に言語化することが全く不可能であること)によって簡単にこの世界観に引き込まれていきます。そして、覚醒しつつも声を上げられない主人公は個人的に感慨深かった、特に十代のころには……。前半は夢中で読めるんだが、後半ちょっと気が重くなるよ。人間性の可能性と限界、人間の残酷さと愛についての作品です(ここにも矛盾が!!)